コレクション: COTOH
COTOHの創作は、イラストレーションと現代美術、あるいは商業性と芸術性の境界を揺さぶることから始まります。かつて複製技術やデジタル技法を駆使してきたその足跡は、現在、人間の身体性が刻印された「手描き」へと回帰しています。これは単なる技法の選択ではなく、不完全さを内包する「人間らしさ」を、ポストヒューマン時代のリアリティとして再定義するプロセスです。
描かれる像は特定の個人ではなく、実在と虚構の狭間に立つ「第三の存在」です。原型を持たない「シミュラークル」としての彼女たちは、SNS上の視線と欲望を吸収し、現実以上に強固な実在性(ハイパーリアル)を獲得します。それは身体とデータの境界を無効化し、既存の人間像を解体するサイボーグ的な試みでもあります。
この思索の核心にあるのが、**「Hyper-Identity(超越的自己像)」**という概念です。
これは量子力学における「重ね合わせ」の状態に似ています。COTOHが描く像は、無数の可能性を秘めたまま存在し、鑑賞者の観測を経て初めて一つの人格として立ち現れます。自己とは閉じた個体の中に完結するものではなく、他者との差異や関係性の中で無限に生成され続ける「システム」そのものなのです。
日本の二次元という文脈を垂直に掘り下げ、COTOHは「存在しないのに存在を要求する存在」を構築します。それはポスト人間時代における存在のかたちを更新する、新たな概念装置の提示に他なりません。